人工股関節手術後に注意したい動作|脱臼しやすい姿勢は術式で違う?理学療法士が解説【静岡市】

 

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人工股関節手術後、「この動作をして大丈夫?」と不安ではありませんか?

 

人工股関節全置換術(THA)を受けたあと、脚を組んではいけない?しゃがんでも大丈夫?正座はできる?床に座ってもいい?靴下はどう履けばいい?車への乗り降りは?寝返りで脱臼しない?いつまで動作に注意すればいい?——と不安になる方は少なくありません。

 

人工股関節手術後には脱臼の可能性があるため、一定の動作に注意するよう説明されることがあります。しかし、ここで非常に重要なのは、人工股関節手術後のすべての方に、同じ禁止動作があるわけではないということです。

 

注意すべき動作は、手術進入路、人工関節の設置状態、術中の安定性、軟部組織の状態、主治医の方針、個々の身体機能などによって異なります。そのため、インターネットで見た「禁忌肢位」をそのまま自分に当てはめるのではなく、自分がどのような手術を受け、どのような指示を受けているのかを確認することが最優先です。

 

 

 

 

 

 

Contents

🔵 人工股関節の「脱臼」とは?


 

人工股関節では、大腿骨側の人工骨頭が骨盤側のカップから外れることがあります。

これを人工股関節の脱臼といいます。脱臼は「ある姿勢をとったから必ず起こる」というものではなく、人工股関節の設置位置や軟部組織の状態、手術進入路など、複数の要素が関係します。「○○したら脱臼する」と単純に考えるのではなく、自分にとってどの方向への動きに注意が必要なのかを理解することが重要です。

 

 

 

 

 

🔵 なぜ手術の進入路によって注意する動作が違うの?


 

人工股関節全置換術では、後方・後側方から進入する方法、前方から進入する方法、前外側・側方から進入する方法など、いくつかの手術進入路があります。手術の際にどの方向の関節包や筋肉などへ操作が加わるかによって、術後の股関節を支える軟部組織の状態が異なり、脱臼しやすい方向にも違いが生じます。

 

後方系の進入路では、股関節を深く曲げる・脚を内側へ入れる・脚を内側へねじる(屈曲+内転+内旋)の組み合わせで脱臼リスクが高くなる場合があります。

 

前方系の進入路では、股関節を大きく後ろへ伸ばす・脚を内側へ入れる・脚を外側へねじる(伸展+内転+外旋)の組み合わせに注意が必要となる場合があります。

 

後方アプローチで注意する姿勢と、前方アプローチで注意する姿勢は同じではありません。ここが「人工股関節だから○○禁止」と一律に説明できない理由です。実際にどの程度まで動かしてよいかは、主治医からの指示を優先してください。

 

 

 

 

 

 

🔵 近年は「すべて禁止」ではなくなってきています


 

以前は人工股関節手術後に、90度以上曲げない、脚を組まない、床には座らない、正座しない、しゃがまないなど、多くの生活動作を制限する指導が行われることもありました。しかし、人工関節や手術方法、手術支援技術などの進歩によって、近年では一律の動作制限を行わないケースも増えています。

 

昔聞いた人工股関節の注意事項が、現在の自分にもそのまま当てはまるとは限りません。一方で、手術方法や術中の安定性によっては、現在でも一定期間の動作制限が必要な場合があります。「制限は全部不要」と考えるのも適切ではありません。

 

 

 

 

 

 

 

🔵 人工股関節手術後によく聞かれる動作


 

 

① 脚を組んでもいい?

 

一律に禁止とは言えません。ただし、脚を組む動作では股関節の内転や回旋が加わるため、術式によっては注意が必要になることがあります。特に術後早期や、主治医から脚を組まないよう指導されている場合は避けてください。「反対側の脚を上にするなら大丈夫」といった自己判断もおすすめできません。

 

 

 

② しゃがむ・横座り・割座は?

 

しゃがむ動作、横座り、割座はいずれも股関節に深い屈曲や強い回旋が加わる動作です。特に後方系の進入路で深い屈曲や内旋方向の動きを制限されている場合には注意が必要です。座っている最終姿勢よりも、そこへ入る途中の動作に注意が必要な点が重要です。

 

一方、術式や回復状態によっては段階的に練習できる場合もあります。「人工股関節だから一生しゃがめない」というわけではありません。具体的な床への座り方・立ち上がり方の手順は、[人工股関節手術後の階段・靴下・床生活](/hip-replacement-daily-activities/)で詳しく解説しています。

 

 

 

③ 正座はできる?

 

正座そのものがすべての人工股関節術後で禁止されるわけではありません。

ただし、正座になるまでの過程で股関節を深く曲げる、脚をねじる、横座りを経由するなどの動作が入ることがあります。座っている最終姿勢よりも、そこへ入る途中の動作に特に注意が必要です。床生活へ戻りたい場合は、座り方・立ち上がり方まで含めて確認することが重要です。

 

 

 

④ 靴下・靴を履いてもいい?

 

靴下や靴の着脱では、股関節を大きく曲げたり、脚を身体へ引き寄せたりする必要があるため、術後早期は注意が必要な動作の一つです。ソックスエイドや長い靴べらなどの自助具を使う場合もあります。具体的な履き方の工夫・自助具の使い方は、 人工股関節手術後の階段・靴下・床生活 で解説しています。

 

 

 

⑤ 椅子・トイレは低くても大丈夫?

 

低い椅子では股関節の曲がる角度が大きくなります。

特に深い屈曲を制限されている場合には、高めの椅子を使う、座面を高くする、洋式トイレを使用するなどの調整が行われることがあります。ただし、「人工股関節だから必ず高い椅子を使い続けなければならない」わけではなく、術後時期や主治医の指示によって変わります。

 

 

 

⑥ 車への乗り降りは?

 

車では低い座席・狭いスペース・身体をひねる動作が重なりやすく、片脚を車内へ入れたまま身体だけをひねる動作には注意が必要です。基本的な乗り降りの手順は、人工股関節手術後の階段・靴下・床生活で解説しています。

 

 

 

 

 

 

 

🔵 「和式トイレ」はどう考える?


 

和式トイレでは深いしゃがみ込みが必要です。

人工股関節手術後、とくに術後早期や深い股関節屈曲を制限されている場合には、難易度の高い動作です。可能であれば、退院後しばらくは洋式トイレを使用できる環境を整えることが現実的です。また、「しゃがめるから使ってよい」ではなく、しゃがむ→排泄姿勢を保つ→立ち上がるまで安全に行えるかを確認する必要があります。

 

 

 

 

 

 

🔵 「何週間まで注意すればいい?」には一律の答えがありません


 

「3カ月たったら何をしても大丈夫ですか?」という質問もあります。

しかし、動作制限の期間についても一律には決められません。手術進入路、術中の安定性、軟部組織の修復状態、主治医の方針、術後経過などによって異なります。カレンダーの日付だけで自己解除するのではなく、医療機関から指示された期間を確認することが重要です。

 

 

 

 

 

 

 

🔵 脱臼を怖がりすぎて動かなくなることにも注意


 

一方で、「人工股関節だから怖い」という理由で、ほとんど外出しない、股関節を動かさない、床生活をすべて諦める、趣味をやめる、必要以上に身体を固めて歩くという状態になることもあります。

 

必要な注意は重要ですが、必要以上の活動制限が長く続くことが、その人にとって最適とは限りません。大切なのは、「危険だから全部避ける」ではなく、自分には何を注意すべきで、何はできるのかを整理することです。

 

 

 

 

 

 

🔵 「禁止動作」ではなく「組み合わせ」で考える


 

人工股関節術後では、「股関節を曲げる」という一つの動作だけではなく、どの方向の動きが組み合わさっているかが重要になります。

 

例えば後方脱臼方向では、屈曲+内転+内旋が組み合わさることでリスクが高くなる場合があります。

日常生活では、低い場所へ座る、足元の物を取る、靴下を履く、床で向きを変えるなどの中で、複数の動きが無意識に組み合わさります。だからこそ、「○○禁止」という言葉だけ覚えるより、実際の動作を確認することが重要です。

 

 

 

 

 

 

🔵 T-performanceでは日常生活動作まで確認します


 

T-performanceでは、「人工股関節だから内旋禁止です」というように、手術名だけで一律の判断は行いません。

 

 

 

▶︎ STEP 1|手術内容・医師の指示を確認

 

手術日、手術進入路、主治医から説明された注意事項、禁止されている動作、制限期間、現在の経過などを確認します。

手術内容が分からない場合には、退院時の資料などを確認することもあります。医学的な判断が必要な場合は、手術を受けた医療機関への確認を優先します。

 

 

 

▶︎ STEP 2|現在の身体機能を評価

股関節の動き、筋力、バランス、荷重、骨盤、体幹、膝、足首などを確認します。

 

 

 

▶︎ STEP 3|実際に困っている動作を整理

「靴下が履けない」という場合でも、単純に股関節が硬いとは限りません。股関節の動き、骨盤の動き、体幹の柔軟性、バランス、動作方法への不安などを整理します。

 

 

 

▶︎ STEP 4|安全な方法を順序立てて練習

必要に応じて、椅子からの立ち座り、靴下・靴、床への座り方、床からの立ち上がり、車への乗り降り、階段、しゃがみ動作などを練習します。主治医から動作制限が出ている場合は、その範囲内で行います。

 

 

 

 

 

 

 

🔵 脱臼が疑われる場合は自分で戻そうとしない


 

次のような状態が突然生じた場合には注意が必要です。

股関節や鼠径部に強い痛みが出た、急に脚へ体重をかけられなくなった、脚の位置が普段と明らかに違う、脚が短くなったように感じる、股関節を急に動かせなくなった——このような場合には、無理に立ったり、自分で股関節を動かして元へ戻そうとしたりせず、医療機関へ相談してください。

 

 

 

 

 

🔵 まとめ|人工股関節術後は「何をしてはいけないか」より「自分は何に注意するのか」


 

人工股関節手術後には脱臼への注意が必要ですが、すべての方が同じ動作を禁止されるわけではありません。

 

特に確認したいのは、

①自分がどの手術進入路で手術を受けたか

②主治医からどのような注意を受けているか

③いつまで制限が必要と言われているか

④現在の身体機能はどうか、

⑤実際の生活で何に困っているか

 

後方系・前方系では、注意すべき股関節の方向が異なる場合があります。

また近年では、一律の生活動作制限を行わないケースも増えています。インターネット上の情報だけで「これは絶対禁止」「もう何をしても大丈夫」と判断せず、自分の手術と現在の状態に合わせて考えることが大切です。

 

 

 

 

 

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T-performanceでは、人工股関節手術後など、整形外科手術後の退院後・生活期リハビリに対応しています。

理学療法士が、手術からの経過、主治医からの指示、股関節の動き、筋力、バランス、歩行、実際の生活動作、今後行いたい活動を確認します。そのうえで、評価→整理→順序設計→介入の流れで、現在の状態に必要な内容を整理します。

 

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🔵 よくある質問


 

▶︎ Q1.人工股関節手術後は脚を組んではいけませんか?

 

すべての方で一律に禁止されるわけではありません。ただし、脚を組むことで股関節の内転や回旋が加わるため、手術進入路や術後時期によって注意が必要な場合があります。主治医・医療機関からの指示を優先してください。

 

 

▶︎ Q2.人工股関節手術後に正座はできますか?

 

正座そのものがすべての方で禁止されるわけではありません。ただし、正座へ移る途中や床から立ち上がる際に股関節へ大きな屈曲・回旋が加わる場合があります。床生活へ戻る場合には、動作全体を確認することをおすすめします。

 

 

▶︎ Q3.人工股関節手術後は90度以上曲げてはいけませんか?

 

すべての人工股関節手術後で90度という基準が適用されるわけではありません。手術方法や術中の安定性などによって制限は異なります。主治医から具体的な角度制限を受けている場合には、その指示を守ってください。

 

 

▶︎ Q4.脱臼の注意は一生必要ですか?

 

一律には言えません。注意が必要な期間は、術式や人工関節の状態、軟部組織、主治医の方針などによって異なります。自己判断で制限を解除せず、主治医へ確認してください。

 

 

▶︎ Q5.どの手術方法だったかわかりません。どうすればいいですか?

 

退院時の説明書や手術に関する資料に記載されている場合があります。

分からない場合には、手術を受けた病院へ確認することをおすすめします。T-performanceでも、主治医からの指示内容を確認しながら身体機能・生活動作の評価を行います。

 

 

 

監修者

 

前田 幸亮 T-performance代表/理学療法士

– 理学療法士
– Spine Dynamics療法 上級認定セラピスト
– JCCA認定アドバンスドトレーナー
– JCCA認定ベーシックインストラクター
– 認定臨床栄養医学指導士

整形外科・回復期リハビリテーション領域での臨床経験を経て、現在は静岡市を拠点に、退院後・生活期の自費リハビリを中心とした支援を行っています。

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※本記事は人工股関節全置換術後の脱臼・日常生活上の注意に関する一般的な情報提供を目的としています。適切な動作制限は、手術進入路、人工関節の設置状態、術中安定性、術後経過などによって異なります。手術を受けた医療機関・主治医から指示されている内容を最優先してください。